「カテゴリーは「品目」だけでは定義できない」
カテゴリーとは、「類似した商品、製品、サービスから構成される品目のグループであり、通常、類似した属性や特性を持つものです。例えば、事務用品、ITハードウェア、出張サービスなどがカテゴリーの例です。」と定義されます。
次に、カテゴリーマネジメントとは、 「類似した商品、製品、サービスから構成される品目のグループを、そのグループ単位で管理し、財務的および業務上の価値を最大化するプロセス」と定義されます。
しかし、本当に調達においても、「類似した品目や、その属性・特性」だけでカテゴリーを定義してよいのでしょうか。例えば、出張サービスでも、旅行会社に頼むか、航空会社や鉄道会社から直接買うか、会社によって調達先は違います。自社の調達は、調達先と鏡合わせです。調達先(営業部門)は、自社が競争する市場を「事業ドメイン」として捉えています。事業ドメイン内には複数の戦略グループが存在する場合もあります。例えば、航空会社でもフルサービスキャリアとLCCでは同じ航空事業ドメインでも違った戦略グループですね。つまり、調達部門にとっての「カテゴリー」は、調達先の「事業ドメインまたは戦略グループ」とミラーの関係にあるため、調達部門がカテゴリーを設定する際には、調達先企業の事業ドメインや戦略グループを理解することが不可欠です。同じ市場を異なる立場から見ると呼び方が違うと理解すると「カテゴリー」の意味がより理解しやすくなります。

「カテゴリーマネジメントは供給市場を継続的に管理する」
このように考えると、カテゴリーマネジメントとは、この鏡合わせの同一市場を理解し、その市場に対する最適な調達戦略を構築・実行するマネジメント活動として理解することができます。

カテゴリーマネジメントでは、カテゴリー(供給市場)を継続的に分析し、価値を最大化するために、主に次の7つの活動を行います。
支出(Spend)と消費(Consumption)の把握・モニタリング
カテゴリーごとの支出額や消費量を把握し、継続的にモニタリングする。市場分析(Market Intelligence)
市場環境の変化、新たな調達先、代替手段、技術革新などを継続的に調査する。供給・需要予測(Supply & Demand Forecasting)
市場の供給能力や需要動向を予測し、将来の調達リスクや供給余力を把握する。サプライヤー評価(Supplier Performance Evaluation)
コスト、品質、納期、サービスなどの観点から、サプライヤーのパフォーマンスを継続的に評価する。サプライヤー改善(Supplier Development)
サプライヤーと協働し、品質向上、コスト削減、技術開発などを通じて競争力を高める。ビジネス要件への対応(Business Requirement Alignment)
事業戦略や顧客ニーズの変化に応じて、カテゴリー戦略や調達方針を柔軟に見直す。ステークホルダー価値の向上(Stakeholder Satisfaction)
社内外のステークホルダーに対し、コスト、品質、供給の安定性などを通じて価値を提供し、満足度を高める。
「支出分析だけでは、供給市場は見えない」
さて、カテゴリーマネジメントの出発点は、支出分析(Spend Analysis)です。しかし、ここでカテゴリーマネジメントに対する誤解が生じることも少なくありません。
支出分析のデータは、通常、企業のERP(Enterprise Resource Planning)や購買システムから収集されます。そして、過去の購買実績を基に、
どの部署・部門が
何を
どのサプライヤーから
どれだけの金額で
どの程度の数量を
購買したのかを把握します。
これによって、社内に分散していた支出を可視化し、購買の集約、サプライヤー数の適正化、契約条件の統一、価格交渉などの改善機会を発見できます。その意味で、支出分析はカテゴリーマネジメントの重要な出発点です。
しかし、ここで注意が必要です。
支出分析は、企業内部に蓄積された過去の購買データを分析するものです。そのため、分析の焦点が「何を、いくら買ったか」という品目と金額に偏りやすくなります。
その結果、カテゴリーが単なる「類似品目の集合」として理解され、本来の目的である供給市場に対する戦略の構築から目がそれてしまうことがあります。
類似した品目であっても、必ずしも同じ供給市場(カテゴリー)に属するとは限りません。重要なのは品目そのものではなく、その背後にある供給市場の構造です。つまり、カテゴリーマネジメントとは、品目分類から始まりますが、供給市場を分析し、その市場に対する最適な調達戦略を構築するプロセスであることを忘れてはいけません。目的は供給市場を理解し、その市場に対する戦略を構築することにあります。
市場にはどのようなサプライヤーが存在するのか
市場は競争的なのか、それとも寡占状態なのか
新規参入の可能性はあるのか
代替技術や代替サービスは生まれているのか
サプライヤーはどの程度の交渉力を持っているのか
といった、供給市場の構造こそが重要なのです。
したがって、カテゴリーマネジメントでは、支出分析による社内の購買実態の把握と、供給市場分析による社外の市場構造の把握を明確に区別し、両者を組み合わせて考えます。
¨ 支出分析:「何を買ってきたか」
¨ 市場分析:「どのように買うべきか」
この違いを理解しなければ、カテゴリーマネジメントは単なる購買データの整理やコスト削減に終始し、本来目指すべき供給市場戦略を見失ってしまうでしょう。
「カテゴリーマネジメントが向き合う相手は供給市場」
「カテゴリーマネジメントとは、支出を管理する活動ではなく、供給市場をマネジメントする活動」です。
カテゴリーは品目分類から始まります。しかし、カテゴリーマネジメントが向き合う相手は品目ではありません。供給市場です。
では、その供給市場は、どのような視点で分析すればよいのでしょうか。次回は、Kraljic Matrixの背景となる市場構造に着目しながら、供給市場分析の考え方を解説します。
References
Institute for Supply Management (ISM). (2018). CPSM® Study Guide 3rd Edition
執筆者
久原 勇作
NPO日本サプライマネジメント協会 代表理事
MBA CPSM MBCI 中小企業診断士他
日系大手企業にて国際提携, マーケティング(含むWebマーケティング), 統計的品質管理, 調達及びリスクマネジメント等の要職を歴任。専門的な体系的知識と実践の両輪が機能するキャリアデベロップメントを支援している。
MBAインストラクターを兼職:担当はCorporate Finance, Marketing, Leadership Management
コンサルタント専門は経営管理、人材育成、サプライチェーンマネジメント、事業継続マネジメント、リスクマネジメント、マーケティング
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