お問い合わせ

2026/07/03

【インタビュー】サプライチェーンの初動対応を支える最新AI技術の活用(JX通信社代表・米重克洋)

    ――「想定外」の時代、調達・購買はどう情報と向き合うべきか

    自然災害や事故が起きたとき、サプライチェーンの寸断を最小限に抑えられるかどうかは初動対応の早さで決まる。しかし、SNSと生成AIの普及で「情報の洪水」が起きる今、正確な情報を素早くつかむことはむしろ難しくなっている。ISM Japanでは、AIリスク情報サービス「FASTALERT」を提供するJX通信社 代表取締役の米重克洋氏(AI防災協議会理事)に、調達・購買担当者が備えるべき「情報面のBCP」について聞いた。

    (聞き手:ISM Japan)

    ■「想定外」に備えられていないサプライチェーンの現状

    ――まず、企業の災害・インシデント対応の現状をどうご覧になっていますか。

    米重:インシデント発生時に事業継続や被害最小化の成否を分けるのは、初動対応の速さです。調達・購買の観点で言えば、サプライヤーの被災把握が遅れれば代替調達の判断も遅れ、部材の欠品が生産停止や納期遅延、ひいては顧客への供給責任の毀損へと連鎖しかねません。

    当社が2025年11月に実施した調査では、BCP担当者が対策を講じている災害は「大きな地震」が74%、「台風・風水害」が56%でした。多くの企業が備えを進めている一方で、富士山の噴火や未知の活断層による地震、海外サプライヤー拠点での事故といった「想定外」が起きたとき、迅速に調達影響を判断できる体制があるかは別問題です。

    ――想定外への備えとは、具体的に何が必要なのでしょうか。

    米重:まず「今、何が起きているのか」を正確に把握することです。ただ、SNSによる「一億総発信者」化や生成AIの普及で、インシデント発生時には情報の洪水が起こり、全体像の把握はかえって難しくなっています。

    ■「調達判断に活かせる情報」だけを得る難しさ

    ――情報が多すぎて選べない、ということですか。

    米重:そうです。地震ひとつとっても気象庁が発表する情報は少なくとも6種類はあり、発表タイミングも異なります。そこに自治体の避難指示などの情報、ライフラインや道路の情報、報道、SNSの目撃投稿、自社拠点やサプライヤーからの被害報告が同時多発的に押し寄せます。特にメーカーの工場は、住宅地や都市部から離れている、夜間・休日に人通りの少ない場所に立地していることが多く、Tier2以降のサプライヤーとなれば、一次情報を得ること自体が困難です。

    初動に必要な情報の要件は、「今起きている事象であること」「場所が特定できること」「何が起きているかが具体的にわかること」の3点に集約されます。報道や公的機関の情報は信頼できますが、確認プロセスを経るため即時性に欠け、拠点単位で見ると粗い。一方、SNSは現場の動画像を伴う即時性の高い情報源ですが、偽・誤情報も多い。当社がAIと専門チームで日々確認するSNS投稿のうち、実際にインシデント情報として配信するのは全体の1%にも満たないのです。これを調達担当者が人力で精査するのは現実的ではありません。

    ■解決策は、AIで「確かな情報」を流通させること

    ――そこでFASTALERTの出番になるわけですね。

    米重:はい。FASTALERTは、膨大な情報から事業リスクに直結する確かな情報をAIで抽出・配信するサービスです。近年は生成AIで精巧な偽画像・偽動画が容易に作られ、災害時の偽・誤情報は顕著に増えました。鵜呑みにすれば誤った調達判断による損害にもつながります。だからこそ、SNSだけ、公的情報だけといった単一の情報源に依拠せず、多元的に信憑性を評価する仕組みが不可欠です。

    公的情報のみに頼る備えにも注意が必要です。2025年9月の静岡・吉田町の竜巻では、被害発生から「竜巻注意情報」の発表まで1時間半以上のタイムラグが生じました。そして何より、平時に使いこなせていない情報手段を緊急時にだけ活用することは、まず不可能です。

    ■「守り」から「攻め」のサプライチェーン情報収集へ

    ――調達・購買部門は、今後どう変わるべきでしょうか。

    米重:ある大手メーカーの危機管理担当者は、必要な情報の要件として「全世界の幅広い情報を収集できること」「インシデントの場所を特定できること」「自社・取引先の拠点と紐づけられること」の3点を挙げていました。グローバル調達では言語と時差の壁があり、場所の特定と拠点との紐づけはさらに難しい。

    FASTALERTは、AIと専門チームによる24時間365日の監視で全世界のリスク情報を収集・分析し、SNS・報道・公的発表を照合して発生場所を高精度に特定します。事前登録したサプライヤー拠点と紐づければ、自社の調達に影響するインシデントだけを即座に覚知できます。拠点の一括登録機能で、サプライヤーリストのメンテナンス負荷も抑えられます。

    被災の一報を待つ「守り」から、正確な情報だけを集めてサプライチェーンへの影響を即座に判断し、能動的に供給リスクを最小化する「攻め」の情報収集へ。その変革こそが、想定外の時代の事業継続や調達・購買活動を支えると考えています。

    また、当社が提供しているようなリスクに関する情報を有効に活用するためには、そもそもサプライヤーに関する情報を適正に管理し、それを更新して、「インシデント対応時に使える最新の情報」として保有しておく必要があります。

    こうしたサプライチェーン管理の機能を持つサービスに、当社のFASTALERTのデータを連携することも可能です。すでに、いくつかのサプライチェーン管理サービスにFASTALERTのデータは連携されており、今後もご相談に応じて提供していきます。ご関心がございましたら、お使いのサービスの提供企業や、当社にぜひお問い合わせください。

    ――本日はありがとうございました。

    プロフィール

    米重克洋(よねしげ・かつひろ)

    JX通信社 代表取締役/AI防災協議会理事

    https://fastalert.jp/

    この記事をシェアする

    ホーム

    【インタビュー】サプライチェーンの初動対...