
COMMODITY MARKET INTELLIGENCE | PETROCHEMICALS FEEDSTOCK
ホルムズ海峡の供給減と備蓄義務化を背景に、アジア太平洋地域のナフサ市場が急反発
TOKYO — July 22, 2026 | By — ChemAnalyst
アジアの石油化学原料市場は、数ヶ月にわたる下落の後、価格動向が劇的に変化している。2026年4月から6月にかけて、指標となるナフサCFR東京価格が30%近く下落するなど長期にわたる下落が続いた後、スポット価格は7月中旬に急騰した。この急激な変化は、川下の化学メーカーや調達担当者の予測を超えるものであり、輸入依存型のアジアのエネルギー回廊の微妙なバランスを浮き彫りにしている。
ケムアナリストのリアルタイム価格データによると、2026年7月17日のナフサCFR東京は833.00ドル/MTに急騰し、前週の664.00ドル/MTから169.00ドル/MT(+25.45%)という大幅な上昇を記録した。月次では、7月の平均価格は864ドル/MT付近となっている。この急上昇により、3ヶ月に渡る下落傾向(4月1,039ドル/MT、5月964ドル/MT、6月732ドル/MT)は終わりを迎えた。
急激なトレンドの変化は、東アジアのクラッカーが、地政学的な海上輸送の要衝、政策介入、国際貨物輸送の混乱に対して極めて脆弱であることを浮き彫りにしている。第2四半期には供給過剰・需要低迷の状況であったが、物理的な輸送制限が急激に供給をひっ迫するに至った。
Figure 1: Naphtha CFR Tokyo Pricing Trend (April – July 2026) showing sharp mid-July rebound.
地政学的圧力と政策介入が強気相場の急騰を加速
価格が急騰した主な要因は、中東を起点とする供給側の混乱である。ホルムズ海峡の緊張が高まり、東アジアの主要製油拠点向けの原油およびコンデンセートの輸送が深刻な影響を受けている。日本と韓国は、ナフサ原油の輸入を中東諸国、特にクウェート、カタール、アラブ首長国連邦に大きく依存しているため、輸送の安全性が脅かされると運賃込み価格(CFR)での供給が直ちに制限されることになる。
海上輸送の制限に加え、経済産業省(METI)はナフサの備蓄義務を復活させる戦略計画を発表した。この義務化の可能性を受けて、アジアのトレーディングデスクでは、国内の製油・石油化学関連の会社が規制上の義務を果たすために現物貨物の確保に奔走し、スポット価格のプレミアムにさらなる上昇圧力がかかっている。
原料代替による高コスト削減の試みは、日本のスチームクラッカーにとってほとんど実現不可能であることが判明している。日本の液化石油ガス(LPG)貯蔵容量は現在約350万トンで上限に達しており、LPGやプロパンの代替操業の余地は事実上存在しない。その結果、地域のエチレンクラッカーは依然としてナフサを主要原料として利用せざるを得ず、ナフサ貨物へのスポットによる買い圧力が集中する状況が続いている。
中東からの原油輸入の逼迫と経済産業省の戦略備蓄政策が相まり、東アジアではスポット貨物の争奪戦が激化した。第2四半期の全体的な傾向は供給過剰と下流市場の低迷であったが、地政学的要因と政策介入が強気バイアスを改めて印象づけた。 | — Karan Chechi – Director, ChemAnalyst |
川下の稼働率低迷が川上の価格上昇を抑制
CFR東京価格が急激に上昇している中で、市場全体のファンダメンタルズは複雑な様相を呈している。輸入コストは高騰しているが、石油化学製品の川下の収益性は依然として大幅に低下している。鹿島や水島といった主要施設を含む日本のエチレン分解プラント12基のうち6基は、稼働率を下げて操業している。
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などの主要オレフィン誘導体製品、およびエチレンやプロピレンといったモノマー原料の需要低迷により、クラッカーの利益率は抑制されている。同時に、工業製造業や自動車産業における芳香族化合物(ベンゼン、トルエン、キシレン)の需要も低迷している。クラッカーの稼働率低下は、ナフサの総消費量を効果的に抑制し、価格高騰を防ぐ重要な心理的・経済的な抑制力として機能している。
市場環境とコスト構造
化学品の調達の際に直面する財務面でのリスクを把握するため、ケムアナリストでは、アジア太平洋地域でのナフサ生産に関わる主要な指標およびコスト要因を詳細に分析している。
指標 | 価格 / 状況 | 市場環境 |
スポット価格 | $833.00 - $864.00 / MT | 海上輸送の混乱により6月( $732/MT)から反発 |
12週の価格推移の平均 | $802.99 / MT | アジア太平洋地域において短期的な強気トレンド |
第2四半期の価格トレンド(4-6月) | -29.5% | 域内の余剰在庫と需要減による落ち込み |
日本への主要輸出国 | クウェート、カタール、UAE、韓国 | ホルムズ海峡など中東地域の海上輸送への高い依存 |
アジア太平洋地域のコスト構造 | 58.68% が原材料費 | ナフサ価格の6割近くが原材料費 |
Figure 2: Breakdown of Asia-Pacific Naphtha Cost Components
短期的な市場予測
2026年7月後半から8月にかけて、アジア太平洋地域のナフサ価格は堅調に推移すると予想される。中東の要衝における継続的な輸送リスクや、日本による備蓄の動きが、引き続き価格の下支え要因となる。一方で、川下需要の低迷やスチームクラッカーの稼働率低下が価格の急騰を抑制するため、市場全体としては、供給と需要の間で微妙なバランスが保たれる見通し。
購買活動とケムアナリスト
ナフサのような価格変動の激しいコモディティ市場では、急激な価格変動がサプライチェーンを混乱させ、利益率を圧迫する恐れがあります。ケムアナリストは、競争力のある調達を実現するため、リアルタイムな市場情報を化学品の調達部門、部門責任者、バイヤーなどに提供しております。
· リアルタイム価格トラッキング・インコタームズ(貿易条件)に基づくベンチマーク:世界各地の市場価格(日次・週次・月次)をCFR、FOB、CIF、Ex-Works、Ex-Locationなどのインコタームズに基づき把握できます。
· コスト構造の詳細な分析:化学製品の複雑なコスト構造を、直接材料費、エネルギー・ユーティリティコスト、人件費、間接費、サプライヤーマージンにまで分解し、厳密なコスト交渉を実施します。
· サプライチェーン・物流リスクのモニタリング:港湾の動き、海上輸送の混乱、地域ごとの在庫水準、為替変動、定修・事後保全などをリアルタイムで追跡します。
· 川上・川下市場の相関性:原油価格の変動が軽質ナフサや重質ナフサといった原料の供給に及ぼす影響を把握し、エチレン、プロピレン、ベンゼン、ガソリン基材などの派生市場における正確な需要予測を可能にします。
ケムアナリストの価格データや市場情報を基に戦略的なソーシング活動をおこなうと、地政学的リスクの低減、契約時期の最適化、利益率の確保が実現できます。
ケムアナリストについて
ケムアナリストは、コモディティや原材料の市場動向および価格情報を提供するインテリジェンスプラットフォームです。40カ国以上、1,000品目を超えるコモディティを対象に、各業界のニーズに合わせ、包括的な価格情報や市場情報を提供しています。業務効率の向上とコスト削減の実現を目指し、最先端のAI技術を導入しております。中核となるデータサービスや、最終製品の価格をシームレスに追跡する「PriceBu」などのプラットフォームを通じて、ケムアナリストは世界中の企業の購買戦略の最適化・意思決定をサポートします。

Author: Karan Chechi is the CEO of ChemAnalyst, a leading Procurement Intelligence platform that helps manufacturers make data-driven sourcing decisions through real-time commodity pricing, market intelligence, demand-supply analysis, and supply chain insights. With extensive experience in the chemical and manufacturing industries, he is a recognized thought leader in procurement, raw material markets, and digital transformation, regularly speaking at global conferences and industry events on market trends, procurement strategies, and supply chain resilience.

Editor: Takahiro Nakagawa, ChemAnalyst.
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