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次世代へのヒント:現役時代に工夫した調達事例①

上原 修

次世代の購買調達職の皆様へ有益な情報ということで自身の体験を記述します。今となればかなり古い話になりますが古今東西、これらの体験談から少しでも得られることがあれば幸甚です。

誰も信じなかった消防自動車の輸入

当時絶対あり得ないと言われた特装車両を米国から調達した事案。社内の需要家を味方につけ、欧州と米国企業のオファーを入手し、最終的に米国製を選び、石油コンビナート現場まで輸送し、現場の消防隊員へ引き渡した。

海外調達といえば真っ先に社外の情報が重要だとなるが、本件では社内と同時に関係官庁との交渉が大きな壁となった。ありていに言えば国外の機械を国内に入れる場合、国としての検査があるのは当然で関係官庁で適合法を持っている。その検査を凌駕しないと国内と使用することができない。但し、役所の言う検査内容も更新していないため今では不要として片づけられるものもある。あるいは過度な試験も立法時点では必要であっても今では技術的に行き過ぎという検査も含まれるため相当な交渉を要したことは否めないと考える。

①品質検査②実走行試験③サプライヤー工場から需要元現場までの海上と陸上輸送④車両納品後の保守と維持保全⑤国土交通省の規制、新車のトラック・バスの排出ガス基準値について、NOxを40~65%、PMを53~64%、それぞれ大幅に低減という排出ガス輸入時の検査。⑥輸入自動車特別取扱の届出:運輸(国土交通)大臣に対し輸入自動車特別取扱届出書を提出。

要するに、国内での諸規制がもう一つの障害であった。ウクライナ戦争でもよく見る、戦時における火災時に使われる消防自動車は、一種のれっきとした軍用車両である。軍備を持たない日本では想像を絶する大規模な車両が日本港に入り、中部地区の化学コンビナートまで運ばれた時は、正月の出初式に地元の消防庁職員が物珍しく見学に来たほどである。

海外からの輸入機材に関して、現地価格(FOB現地港渡し)が国内現行価格の半分であれば実行可能と判断。TCO(総取得原価)としては、最終的に30%原価節減となった。為替相場が日々変わるので、都度の計算は面倒で、即決断に繋がらない点も要注意であった。

事例:日本で初めて、消防自動車を輸入し、40%以上のメリットを得た。(1995年:対ドル為替相場80円)

 一番の苦労は社内説得であった。購買は常に社内と社外との板挟みであり、特に事業部が抵抗勢力かも知れない。

どの資機材もそうだが前提としてサプライ市場を分析することから始めた:

1.       世界の事情:米国には大手三社が挙げられ中でもEmergency-One社が北米シェア50%以上と言われている。

米国企業

Emergency-One

Florida

Simon Ladder Towers

Ohio

Pierce Manufacturing

Wisconsin

欧州企業

国名

SOMATI N.V.

Belgium

Kronenburg B.V.

Holland

Camiva

France

Rosenbauer International

Austria

Chinetti srl

Italy

※因みに関西新空港に納入されたオーストリアのRosenbauer製の空港消防車は、帝国繊維が日本の代理店である。

2.       日本の事情

日系企業

所在地

森田ポンプ

大阪市

日本機械工業

東京都

GMいちはら工業

栃木県

日本ドライケミカル

 

吉谷機械製作所

 

※上位3社で全国シェア74%以上占有する

 

3.       世界シェア

森田ポンプ

25%

Emergency One

35%

Rosenbauer

25%

その他

15%

勿論、サプライマーケットも日々変化する訳だが、自社の立ち位置を確認しながら最良の戦術を練っていった。

今の現役の購買職に役に立つかどうか不明だが少しだけ経験談を提示する:

1)       日本の代理店は必須の要件:海外メーカーとの直取引の場合、先方との意思疎通が大問題となるのは自明の理だ。いつでもどこでも話せる相手が欲しいため少しの経費が掛かっても代理人を置くことが必要だ。今回も当初は形だけであったが打ち合わせの間、徐々に仲介者として異議を見せるようなってきた。特に輸入後、稼働後のメンテナンスと緊急時対応だ。役所に強いことから窓口として十分な機能を果たしてくれた。

2)       自治省消防庁:規制緩和が始まったばかりで未だ役所も知見が乏しかった。つまり本件が初めての民間による輸入であったのだ。調査の段階で消防庁に対して輸入について確認したところ、「民間向け消防車は、」輸入代理店が自治省令に基づき、その性能を届ければ良く、消防検定協会の認定は不要である」との回答を得ていた。米国製消防車メーカーのEmergency-Oneは日本を除くアジア諸国への輸出実績も多く信頼できると判断した。使用面では、放水性能、トップマウント式操作パネル、ポリプロ製薬液タンクに非常時の緊急車両としての最大の特徴があった。次段の新聞記事が公開されたすぐに、自治省から呼び出しがかかった。担当官の話では「性能が奨励に合致していることを第三者へ説明できなければならない」という課題が示された。動力消防ポンプ車は、自主表示対象機具となっており、消防ホースのような検定品を違い、自治省で定める性能を満足していることが確認できれば、表示(ワッペン)して使用することができる。この性能確認については、従来は、国産品、輸入品全てを消防検定協会が受託しており、同協会に依頼すれば、米国への渡航費用を輸入者が出費することになる:約700万円

3)       今回は、事前に消防検定協会から同協会は関与しないことを確認しているので、日本初の事案として輸入者が性能の省令を満足していることを確認している。但し、省令にのっとり確認する項目は90件もあり、中には過酷な試験も必要となった。

4)       最終的には新年度に替わり、人事異動で消防庁予防課の担当技官から「自主表示だから全く何の問題もない。輸入者自身が技術上適合することを確認し届け出れば省庁として判を押す」との言質を得た。

5)       通常であれば、日本消防検定協会を通すほうが難易度が下がったが、当方は「自主表示」を盾に取り頑として断わり、役所の納得のいく形で届け出を受理してもらった。自前主義を貫き約800万円の費用抑制を行った。

6)       その他の経費:消防法、道路交通法の二つの法律を遵守に多少のコストがかかったが、国内での排ガス規制、車検費用、改造費、訓練費を含め、300万円を最大として計算、実際には、かなり下回った。

7)       引合先と見積金額 購入先決定:製造元を米Emergence-Oneとし、日本の代理店を富永物産株式会社とした。後段海外二社の見積金額は、FOB欧州港であり、海上運賃、保険、輸入諸経費など一切含まれていない。

引合先

製造元

見積金額

納期

その他

代理店

E-One

26百万円

7ヶ月

米国

森田ポンプ

森田ポンプ

42

7ヶ月

日本

岩谷産業

日本機械工業

38

7ヶ月

日本

SIDES

21

10ヶ月

代理店なし

SOMATI

20

12ヶ月

代理店なし

8) まとめ

部門横断チームにより、チームリーダーを購買職マネジャーに充て音頭を取った。但し、チームメンバーには役割分担を明確にしてサイロ(縦割り)を廃し会議では他部門のメンバーにも口を挟めるように工夫した。例:契約金額にしても技術部門が他社の消防隊の話を情報として取り入れ購買部門や運輸部門へ伝えるなど風通しを良くした。購買職も引合先で得た技術情報をメモして設備技術部門へ伝えるなどインテリジェンス機能を発揮した。納期(コンビナート;共同防災による自動車配備時期)を目途にガントチャートを作成しプロジェクトチーム一丸となって進めた。

執筆者

上原 修

NPO日本サプライマネジメント協会 名誉理事長
CPSM  C.P.M.  MBA  JGA
大前研一ビジネス・ブレークスルー大学大学院 教授
米アリゾナ州立大学CAPS Research 日本チェアー
流通経済大学 客員講師 災害ロジスティックス担当
ヨーロッパ購買経営大学院 European Institute of Purchasing Management 前教授
仏パリESSECビジネススクール 前特任教授

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