― Purchasing、Sourcing、Procurement、Supply Managementの違いから調達組織への期待を考える ―
調達部門の英語の名称を聞くと、その会社の調達部門に対する経営の期待を感じることがあります。もちろん部門名だけで判断することはできませんが、単に英語に直訳したのでなく、Purchasing、Sourcing、Procurement、Supply Managementを意図をもって使い分けている企業もあるように思います。
さて、これらの言葉の定義をそれぞれ見ていくと、調達機能がどのように発展してきたのかを垣間見ることができます。
Purchasingは、必要な資材(materials)、サービス(services)、設備(equipment)を取得するための実務・運用機能であり、発注、納期管理、検収、支払などが中心となります(ISM, 2018)。
Sourcingは供給市場に目を向けます。仕様(specification)策定、Value Analysis/Engineering、サプライヤー市場調査、交渉、その結果に伴う処理(Purchasing)を含め、カテゴリーマネジメントの目標を達成する品質を最適の価格で入手するプロセスをいい、「誰からどのように買うか」を決定する活動です(ISM, 2018)。
Procurementはさらに広い概念です。PurchasingおよびSourcingに加え、契約管理(contract administration)、在庫管理(inventory control)、輸送(traffic)、受入(receiving)、保管(stores)を含んだ組織的な機能です(ISM, 2018)。
Supply Managementですが、ISMはSupply Managementを、組織目標の達成に必要な財・サービスを特定し、分析し、調達し、その供給を実現する活動(ISM, 2018)と定義していますが、私はこれを、「全社戦略を理解し、供給市場を活用して企業の競争優位を実現するための組織機能」と解釈しています。
さらに重要なのは、Supply ManagementはPurchasing/Sourcing/Procurementを支える
□ People(人)
□ Processes(プロセス)
□ 社内外のRelationships(関係性)
を統合的にマネジメントすることに主眼が置かれています(ISM, 2018)。
私はこれらの定義を理解するために、以下のように整理してみました。
Purchasing:処理的なオペレーション
↓
Sourcing:サプライベースの最適化
↓
Procurement:PurchasingとSourcingを区分し包括した組織機能
↓
Supply Management:全社的な競争力を創造するProcurementの戦略的発展型
ISMが示している公式モデルではありませんが、調達機能の発展を理解するには有効な整理だと思います。
では、あなたの組織はどの段階にいるでしょうか?
もし、管理対象は「個々の購買取引」:
発注管理
納期管理
検収
支払管理
購買価格管理 など
が中心であれば、Purchasingレベルかもしれません。
管理対象が「リスクと発注量(または支払額)による最適なサプライヤーポートフォリオ」:市場分析とSpend Analysis
サプライヤー選定
サプライベース最適化
カテゴリー戦略
市場分析
契約交渉 など
が中心であれば、Sourcingレベルまで踏み込んでいるかもしれません。
管理対象が「調達機能全体」の活動:
契約管理
Total Cost of Ownership(TCO)管理
Supply Relationship Management(SRM)
在庫管理
物流管理
Cross Functional Team(CFT)による横断的活動
運営費用の効率化(Cost Efficienciesの測定・管理)など
が中心であれば、全社的な組織目標とより整合しているので、Procurementレベルに至っているでしょう。
管理対象が「企業価値そのもの」:
サプライヤーとの共同開発
イノベーション創出
地政学リスク対応
レジリエンス強化
ESG・人権対応
M&A後のサプライベース統合
調達シナジー創出
調達ROIなど
が中心であれば、「供給市場を活用して競争力を高め企業価値を向上する組織」、つまりSupply Managementレベルであり、グローバルにも評価される調達機能になるでしょう。
さて、もう一つ混同されやすい言葉があります。Supply Chain Managementです。
Supply Chain Managementは、原材料調達から製造、物流、販売、顧客までのモノ・情報・資金の流れ全体をマネジメントします。
一方、Supply Managementは企業の競争優位を創造するために、供給市場を戦略的に活用するマネジメントとする考え方です。
図表1 Supply Managementの視点から見たSupply Chain(筆者作成)

Supply Chain Managementが「生産活動の物・資金・情報の流れ(Flow)」を対象とするのに対し、Supply Managementは「戦略目標の達成に向けて供給市場を活用すること」を対象としていると言えるでしょう。
私は、ISMがあえてSupply Managementという言葉を使う理由もここにあると考えています。
かつて調達部門は、必要なものを安く買うことが使命でした。しかし現在では、供給市場を活用して企業価値を創造することが期待されています。
あなたの組織は、買うことを管理しているのでしょうか?
それとも、供給市場を活用して企業価値を創造しているのでしょうか?
Supply Managementという言葉は、その問いを私たちに投げかけているように思います。
References
Institute for Supply Management (ISM). (2018). CPSM® Study Guide 3rd Edition Leadership and Transformation in Supply Management. Tempe, AZ: Institute for Supply Management.
Schoenherr, T., Modi, S. B., Benton, W. C., Carter, C. R., Choi, T. Y., Larson, P. D., Wagner, S. M., & Young, J. A. (2012). Research opportunities in purchasing and supply management. International Journal of Production Research, 50(16), 4556–4579.
執筆者
久原 勇作
NPO日本サプライマネジメント協会 代表理事
MBA CPSM MBCI 中小企業診断士他
日系大手企業にて国際提携, マーケティング(含むWebマーケティング), 統計的品質管理, 調達及びリスクマネジメント等の要職を歴任。専門的な体系的知識と実践の両輪が機能するキャリアデベロップメントを支援している。
MBAインストラクターを兼職:担当はCorporate Finance, Marketing, Leadership Management
コンサルタント専門は経営管理、人材育成、サプライチェーンマネジメント、事業継続マネジメント、リスクマネジメント、マーケティング
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