
調達・購買部門を取り巻く環境が急速に変化しています。ESG対応やAI・DXの活用、そして次世代を担う人財育成——これらの課題に一人で向き合う時代は終わりつつあります。ISM Japan(特定非営利活動法人 日本サプライマネジメント協会)の研究会は、志を同じくするプロフェッショナルが業種を超えて学び合い、グローバル水準での実践知を共に積み上げる場です。2026年、7つのテーマで新たなシーズンが幕を開けました。
1.ISM Japanの研究とは——プロが集う「実践の場」
ISM Japan(日本サプライマネジメント協会)は、米国ISM(Institute for Supply Management)と連携し、日本におけるサプライマネジメントの普及・高度化を推進する非営利団体です。その中核事業のひとつが「テーマ別研究会」です。
研究会は、法人・個人会員相互の交流促進、若手バイヤーの育成、継続学習の支援(CEH付与)、さらには新たなサービスの事業化を目的として運営されています。CEH(Continuing Education Hours)とは、ISMの資格維持に必要な継続教育単位であり、研究会への1回の参加につき2CEHが付与されます。2026年度はのべ約64名(23社)のメンバーが参加し、7つのテーマに分かれた研究会がそれぞれ年間10回前後の活動を行います。
参加には、ISM個人会員またはISM Japan法人会員であること、及び6割以上の出席が条件となります。

2.2026年の研究会テーマ:3つの戦略軸で挑む
今年度の研究会は「サステナビリティ&ESG」「組織能力&人財育成」「戦略的価値創出&DX」の3軸で構成され、計7つのテーマが同時進行します。
研究会 | テーマ名 | 活動目的・内容 | 参加条件・人数 |
A | サプライヤESG登録認証制度検討研究会 | SAQ等を活用した認証制度の事業化検討 | 10名(固定メンバー) |
B1 | SCMエグゼクティブ育成研究会 | CPO向け教育プログラム・教材開発 | 8名 |
B2 | 調達スキルベンチマーキング研究会 | ISM Mastery Model™を活用した組織能力評価 | 11名(バイヤ企業人材育成担当者限定) |
C | サステナブル調達エクセレンス研究会 | CSR・ESG・スコープ3等のベンチマーキング開発 | 8名(バイヤ企業ESG担当者限定) |
D | 経営貢献調達研究会 | 経営貢献・SCMリスク・DX(AI応用)の3テーマ議論 | 12名 |
E | 若手バイヤーズサミット(未来の調達リーダーズフォーラム) | 業務課題の共有・ディスカッション・大規模イベント企画 | 7名(30代限定) |
F | Women in Supply Management Forum | 女性向け学びとネットワークのプラットフォーム構築 | 8名(主に女性バイヤの方) |
〇サステナビリティ&ESG調達を極める:研究会A・C
ESG対応やスコープ3、供給網の透明性要求が高まる中、研究会Aでは企業間取引の標準化成果物であるSAQ(Self-Assessment Questionnaire:自己評価アンケート)を活用した認証制度の事業化を検討します。また、研究会Cではサステナブル調達全般のベンチマーキングサービス開発を目指し、ESG担当者が実務上の悩みをリアルに持ち寄れる場として機能しています。
〇調達組織能力&人財育成の向上:研究会B1・B2・E
研究会B1「SCMエグゼクティブ育成研究会」は、地政学・地経学リスクが高まる中、CPO(Chief Procurement Officer:調達最高責任者)クラスのエグゼクティブが経営に寄与できるよう育成プログラムを開発します。また、研究会B2では「ISM Mastery Model™」を活用し、自社調達組織の能力を客観的・定量的に評価するフレームワークを構築。さらに研究会Eでは、30代限定で、次世代リーダーの育成を目指す若手専用コミュニティです。
〇戦略的価値創出とダイバーシティの進化:研究会D・F
研究会Dでは、経営への貢献価値の最大化、サプライチェーンリスクへの対応、AI技術の実践的活用という3つのテーマを軸に、調達・サプライチェーン部門が担うべき新たな付加価値を多角的に探究。現場で活かせる実践知を共有・深化させ、組織と経営を動かす力へと昇華していきます。また今年新設された研究会F「Women in Supply Management Forum(WSMF)設立検討会(仮称)」では、サプライチェーン領域で活躍する女性リーダーが集い、経験と知見を共有。互いに刺激し合いながら、次世代のリーダーシップと多様性を育む、持続的なプラットフォームの構築を目指します。戦略と人材、双方から未来のサプライチェーンを切り拓く取組です。
3.参加のメリット:個人と組織にもたらす4つの価値
研究会への参加は、単なる勉強会を超えた多層的な価値をもたらします。
● 異業種・異職種との濃密なネットワーク——国内大手企業の会員メンバーを中心とする、多様な業種のプロフェッショナルが一堂に会し、企業の垣根を越えた率直で本質的な意見交換が行われます。さらに昨年は、会員企業の東京電力様による企画として、福島第一原子力発電所の構内見学会を実施。恒例のフィールド・スタディ・ツアーには、多くのメンバーが参加し、現場に根ざした学びと、信頼に基づく交流を一層深めます。
● CEH取得による資格維持の効率化——ISMの認定資格(CPSM等)保有者にとって、研究会参加は継続学習要件を自然な形で満たす機会です。1回の参加で2CEHが付与されるため、年間20CEH(参加状況により変わります)程度が取得可能です。
● ISM年次大会での発表機会——各研究会の成果は年次大会(毎年11月)の場を活用して協会内外に発信されます。自らの研究成果を対外的に発表し、業界での認知を高める機会として機能します。
● 米国ISM基準による自社調達力の客観的評価——"ISM Mastery Model”や”ISM Sustainability Principles” などのグローバルフレームワークを用いることで、自社調達組織の現在地を世界水準で把握することができます。
4.年間活動ロードマップ:1月から12月まで
今年度の研究会活動は、全メンバーが一堂に会する2月の全体キックオフ会議から本格始動。以降、年間を通じて4つのフェーズで段階的に展開されます。月1回程度の継続的な活動を通じて、知見を着実に深化させるとともに、人脈も自然と広がっていきます。時間をかけて“学び”と“つながり”を積み上げていく、成長志向のプログラムです。

各研究会は独自のスケジュールを持ちつつも、11月のISM年次大会に向けた成果発表という共通ゴールに向かって進みます。
おわりに——まずは、お試し参加してみませんか?
ISM Japan研究会では参加者を募集しています。「興味はあるけれど、どのテーマが自分に合うかわからない」という方には、お試し参加制度があります。まずはISM Japanの事務局までお気軽にお問い合わせください。説明を聞くだけでも、自社の調達戦略を見直すヒントが見つかるかもしれません。同じ課題意識を持つ仲間との出会いが、あなたと組織の次のステップを切り拓くきっかけになれば幸いです。
お問い合わせ│NPO 日本サプライマネジメント協会(ISM JAPAN)
注:研究会へのご参加は、ISM会員登録が必要です。また、参加条件や定員数によってはご参加いただけない場合があります。
【編集後記】
創刊号では、ISM Japan研究会が2026年に掲げる7つのテーマと、その背景にある問題意識を俯瞰してお届けしました。ESG、DX、人財育成はもはや抽象論ではなく、現場での実践が問われるフェーズに入っています。本研究会は、業種や立場を越えて知見を持ち寄り、試行錯誤を重ねながら価値創出に挑む“共創の場”です。次号からは、各研究会を一つずつ取り上げ、テーマ設定の狙いや議論のポイント、活動のリアルをより深くご紹介していきます。本誌が、読者の皆さまの次の一歩を考えるヒントとなれば幸いです。(ISM Japan研究会事務局)
執筆者
臼井 健一
NPO日本サプライマネジメント協会 理事 / 事務局長
1990年、東京電力株式会社入社。工務、企画、事業開発、技術業務革新、資材調達など、多岐にわたる事業領域で専門性を培う。国際調達および火力・原子力・水力発電設備の調達分野において、管理職・プロジェクトリーダーとして長年にわたり数々の調達改革を牽引。2025年、東京電力ホールディングス株式会社を定年退職。現在、NPO日本サプライマネジメント協会にて調達人材の育成とサプライマネジメント領域の高度化を推進中。M.Sc. (工学修士)
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