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AI時代だからこそ高まるデータマネジメントの重要性|全3回(第2回)

大西 浩史

第1回では、AI時代におけるデータマネジメントの重要性を紹介しました。第2回では、企業の現場でデータマネジメントが難しい理由を具体的に見ていきます。

3. なぜデータマネジメントが難しいか

  読者の中には日常的なビジネスシーンにおいて、図表4のような課題に直面した経験が少なからずあるのではないだろうか。たとえば、「活用対象のデータが信頼できないため、目視確認や是正を行う必要がある」、「同類のデータを各部署が重複して収集・メンテナンスしているため全体として非効率になっている/同期が取れない」、「データに関する知見が属人化していて、社内の有識者を探して聞かないと欲しいデータにたどり着けない」など、データマネジメントの不在・不備は「AI Ready」はおろか、「Human Ready」をも阻害する原因となっていることがわかる。「当局報告への数字が間違っていて、その原因がどのシステムのどのデータにあるのかをしらみ潰しに探さなければならなくなった」といった会社としての大きなリスク事象が発生しない場合には表面化しにくいが、ビジネスの現場では信頼性が低いデータに起因した問題が堆積して地表の下に積み重なっている。

 

 (図表4)データマネジメントの不在・不備に起因するビジネス現場での課題(例)

 それでは、なぜ、こうした問題事象を抑止するためのデータマネジメントが難しいのか。その根本的な原因は、以下の図表5のように、業務上でデータを生成するビジネスパーソンは目の前の業務を迅速に完了させるためにシステムにデータを登録することがファーストプライオリティであり、その生成されたデータがデータマネジメント的な視点で後々どう活用されるかが意識されず、「業務が回っていれば問題ない」という前提で蓄積・流通しているからである。

また、多くの日本企業・組織において、そうした前提で生成されたデータに対する全社横断的な活用の観点や正確かつ意味が理解できるようAIに学習させる観点で、データ品質の整備・監視・監督を行うミッションを持った組織がこれまで不在であったこともその主な要因として挙げられる。

 

 IT・インフラ環境としても、メインフレーム、C/S、Web、クラウド等など、IT技術の進化とともにシステムが分散化し、無秩序にデータが拡散・大量化してきた。また、個別の業務部門ごとに紙処理を電子化するためのITが導入され、データのサイロ化・部分最適化が進行した。さらに、新たなビジネス要件の追加に伴い、場当たり的に業務システムの改修・増改築が繰り返され、複雑なデータ構造が解消されない。この状態のデータをAIに学習させても、AIがハルシネーションを起こさずに正しいアウトプットを出力することは極めて難しいことが容易に想像できるのではなかろうか。

 日本の企業・組織の多くは、活用対象となる“顧客”や“商品”、“部品”等に関わる基軸データが社内のあちこちに散在し、整合が取れていない、粒度が合わない、精度が悪い、どのシステムにどのデータが存在するのかすらわからない、といった「AI Ready以前」の現状に直面しているといえる。

 

 (図表5)人にもAIにも活用できないデータがなぜ生成されるのか

 

 こうした「個別の業務上では不都合が見えにくいが、活用しようとすると障害になるデータ」が発生する原因は、自組織の業務を回すためだけのデータを生産し、流通させてしまうマネジメントの問題が本質であり、システムの改善だけでは決して解決されない。ここがデータマネジメントの最大の難所であり、データを生成する組織、データを活用する組織、データマネジメントを全社的に推進する組織などの各ステークホルダーの役割として明確に定義し、一過性の「プロジェクト」ではなく、継続的・永続的な「プログラム」として企業・組織文化として根付くところまでを射程にすることが重要である。そして、自社が取り扱っている商品・材料、顧客/仕入先の企業・個人、組織・従業員等のデータが組織横断的に一意性と整合性を保ち、分析や仮説・検証が可能な状態であること、活用の目的に照らしてデータマネジメントが行き届いた状態であることがデータ・AI活用の上での要諦となる。

データマネジメントの課題は、システムだけでは解決できません。最終回では、企業・組織が実際に取り組む際のポイントを解説します。

執筆者

大西 浩史

株式会社NTTデータバリュー・エンジニア 代表取締役社長
一般社団法人日本データマネジメント・コンソーシアム[JDMC] 発起人 兼 事務局長

【略歴】
1994年4月 
NTTデータ通信株式会社(現:株式会社NTTデータ)に新卒入社。資材・調達部門に配属、ソフト調達・サービス購買にかかわる契約・交渉・オペレーション業務等に従事。

1997年10月 
自ら発案したデータマネジメント事業が社内ベンチャー制度に最年少で合格、新規プロジェクトとして始動。

2001年10月
社内ベンチャーを母体として、大日本印刷、SAPジャパン等を株主としたジョイントベンチャー-(株)リアライズを設立。(現:NTTデータバリュー・エンジニア)
国内大手の自動車/半導体部品/家電/鉄鋼/素材/食品/製薬/化学/文具・家具などの製造業、メガバンク/信託銀行/生損保/クレジットカードなどの金融業、小売・流通/EC業、通信/電力/ガス/交通等の公共インフラ業、メディア/サービス業、官公庁/教育などの公的機関まで、幅広い領域におけるデータマネジメント/データ活用の取り組みを約30年にわたりリードしてきた。

2011年3月~現在 
一般社団法人日本データマネジメント・コンソーシアム[JDMC]を発起人として創設。DAMA日本支部の理事。経済産業省・独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「データマネジメント人材の育成に関するタスクフォース」主査を務める。

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